(良き感情と良き常識は良き論理より勝る)

人間の科学的といわれる論理や理性や知性はどんなにさかのぼっても根本的には日
本では江戸時代に入ってから、西洋ではルネッサンスに入ってからと考えられ、せ
いぜい500年程度の歴史しかない。
しかし本能に基づく感情は、宗教を含め現代の人間にたどり着くまで、生物の誕生
から何十億年に渡り人間の遺伝子に書き込まれており、さらに有史以来の人間の生
存の全世代に渡り、感情は、本能として形成され脳に書き込まれ、親から子へ引き
継がれてきたのであります。
したがって論理的判断の根本は理性・知性・論理より遙かに「感情」が優位である
ことを理解しておかなければなりません。
つまり理性・知性・論理を超えたところにある「感情」こそが判断の原点であるこ
とを理解していかなければなりません。
したがって「感情」を論理より劣るものとして、扱ってはならないのであり、「良き
感情は良き論理に勝り」「悪しき感情は悪しき論理より劣る」のであります。
さらに良き常識は良き論理に勝るものであります。
さて税は強制徴収される性格があり、利己的遺伝子を持った人間がもっとも逃れた
い性質のものであります。この税の持つ人間に対する強い効果を良く理解して、弱
肉強食の世界経済、日本経済において自由にさせれば際限の無いところの人間が根
源的に持つ利己的な(自らの所得獲得に対する)欲望をコントロ−ルする手段とし
て、さらに人間を利他的行動へ動機付ける(自分以外への所得分配)手段として最
終獲得の所得に課税することによって、進化システムを作動させ経済の拡大再生産
を計り、さらにこれを国が税収とし国の歳入に結びつける方法を考えることが人間
の集団である現代の国の倫理観と税が結びつく上で大切な経済道徳的基盤になるの
です。
税にこのような政策的役割を持たせることはおかしいとの議論は当然出るでしょう。
例えばそれは労使交渉に委ねるべきとの説は当然出るでしょう。
また放任しておけば、自然とどこかで均衡するものだという説も出てくるでしょう。
しかし私はいずれの説だけでは現代の複雑な社会において解決出来ないと考えてい
ます。
つまり自由主義市場経済国家として一人一人の国民に徹底した経済的自由を認める
ための法律制度から社会システムまで提供する上は、その対価(税)を求めるのは
当然であり、そこでこの経済システムを最も良く活用し結果として所得を得たもの
には課税する方式が最も自然で経済に悪影響が無く自己回帰的で妥当と考えており
ます。
同時に自由競争がもたらす根本的弊害を緩和する措置を同時に取るシステムでなけ
れば安心して徹底した経済的自由を認めることは出来ません。
その自由主義経済が持つ根本的弊害を緩和する措置を国が持つ規制手段の内、税を
利用するのが最も現実的 で「費用対効果」の高いものです。
コントロ−ルするからこそ、資本主義的自由や、利己的な自由を徹底的に認めるシ
ステムをつくることが出来るのです。
直接税はこれに答えられる最もふさわしい課税システムなのです。
他にもっと「経済の進化システムに適応し」「費用対効果が高く」「国の財政が成
り立ちうる方法」があれば、是非提案してもらいたいものだと思います。
さすればそれを「税という規制手段」に求める必要がなくなるからです。
つぎに税は人間が最も逃れたい性質のもの(アメリカ独立戦争はイギリス植民地で
あったアメリカがイギリスの課税権から逃れることが最大の理由で起こった独立戦
争だったので す。)である以上その特性を100%理解し活用しなければなりませ
ん。
さて性格上その課税すべき所得の補足は大変難しく、これを公平で公正に補足する
ためには、「金銭」に対するプライバシ−を守ることを厳格に考えすぎないことで
す。
適切な補足方法をある程度認めなければ良い税制は作り上げられません。
その点アメリカの諸制度は市民による陪審員制度の発達と合わせて脱税に対する市
民感情の厳しさと所得の補足方法の多様さを兼ね備えた「納税者番号制度の発達」
も大変参考 になるものです。
つまり「プライバシ−の侵害」と「透明性の確保」は相容れない正反対の概念です。
全ての物事には正反対の概念があります。
人間の健康診断においても、各種の項目において健康の目安があります。
その健康範囲を上回りすぎてもダメであるし、下回り過ぎてもダメなのです。
それと同じようにその正反対の概念の内、どの範囲ならば「健全」なのかをどの範
囲を超えたら「不健全」なのか考える工夫やチエはいつも必要になるのです。
日本国憲法で厳格に守るべきと記載されているプライバシーの項目については最大
限度守られなければならないが、それ以外の項目については資本主義社会において
は「カネ」にブライバシーを特に認めるのは必要最小限度に止めるべきなのです。
資産でも土地建物などの不動産については公の登記情報がいつでも誰でも見れるわ
けだし、信用調査会社によって会社の信用情報は現に実質的に公開されているし、
高額所得情報は個人法人を問わず既に全て公開されているし、個人の相続情報も高
額相続は全て公表されているし、法人の内容情報も全て商業登記簿謄本で公開され
ているし、上場企業の大株主は全て公表されているしこの様な現実の中で資本主義
の根本である「カネ」だけにプライバシーを徹底して認める理由など全くないから
であります。
資本主義の根本である預貯金、株、債券などにつき徹底した納税者番号制を採用し、
その上で消費は規制管理せず自由に行わせ、国民の所得の把握は法人個人を問わず
平等に正確にチェックできる体制を作り上げ(もちろん情報管理の厳格化は当然で
あるが)「不正者を発見しやすくし正直で誠実な普通の国民へ不利益を与えない体
制を確立する」ことによって安心して全力で不公平なく国民一人一人の所得の増加
を目指す経済政策を採用できるのです。
資本主義の健全な発達を促すためには経済道徳を厳密に遵守することが不可欠なの
です。
最後に不公正な競争条件は認めない道徳的な経済環境を作り上げ、大衆主導国家へ
変身し人間の進化と生き残りの意志を前面に押し出しつつ強力に経済成長を為し得
る環境を整備し現実にそれを実現することが世界の民主化のモデルとして世界をリ
ードする日本へ再生と復活が成され未来へ貢献できると確信しています。



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