(クロヨンの愚かしくも恥ずかしい議論について)

クロヨンとは何であろうか。これを天下のエリートたちが机上の統計をもとに広角
泡をとばして議論し、これが消費税導入の大きな理由の一つになっていることを考
えると極めて寂しい感情におそわれます。
クロヨンとはサラリーマンは9割の所得が捕捉され課税されており、個人の中小企
業者は6割の所得が補足され課税されており、農家は4割の所得しか補足され課税
されていないという論議であります。
それでは農家はそんなに有利なのだろうか、中小自営業者がそんなに有利なのであ
ろうか。
そんなに税を納税せずその分自分の資産として蓄えられるなら何故親たちは子供に
無理をしても後を継がせないのであろうか。
何故学歴をつけさせ大都会のサラリーマンなどを目指す人が多いのであろうか。
それでは何故この様な問題を議論しているエリート達自身、自分の娘を農家や中小
自営業者に嫁がせないのであろうか。
何故エリートはその息子をそんなに有利と主張している農家や中小自営業者を目指
させないのであろうか。
そこにはクロヨン論議と全く異なる有利不利を実感として感じ、本当の事実を把握
している農家、中小企業の大衆の現実感覚が存在するので、本人もまたその子たち
も農家や中小企業自営者を本格的に目指そうとしないのです。
エリート達も本当の現実が分かっているので机上の上だけで議論し、自らの息子や
娘を農家や中小企業へ挑戦させようとは決してしないのです。
なんと不正直で不誠実な議論であろうか。これは競争力の不均衡の問題と納税者番
号制の不備の問題であり鉛筆ナメナメ計算する所得の捕捉率の問題ではないのです。
そしてクロヨンなる論議を持ち出し全ての責任を所得税という直接税制になすりつ
け、消費税導入の理由付けに用いることは誠実で正直な対応とはとても言えません。
それは納税者の善意だけに頼り納税者番号制を取っていない所得税制がはじめから
全ての事象を公平に分析し対処出来るわけもなく、複雑な経済現象を厳密に正確に
比較検討する論理的で厳密さは達成出来ないことは明らかだからであります。
大切なことは国民の中に存在する常識的な負担能力に対応した税制が所得税制であ
るというという一点を実現できる金字塔がこの税制には輝いているのです。
労働基準法を適用され、翌月の給与は保証され、あらゆるリスクに対して組織を通
じて手厚く公的保証され、勤労所得としての恩恵(給与所得控除の存在)さらに退
職金・年金(いずれも所得税税制上強い恩典を受けている)などの特典もあり、し
かも自らの所得の計算も全く自ら行わず企業まかせで何の手間いらずであり、これ
で都会の便利さ楽しさを100%手に入れられれば人間として最高なのです。
個人の農家や中小企業自営者は労働基準法を適用されないので労災保険も適用され
ず、明日の売り上げは保証されず、退職金も無く、あらゆる人生の全てのリスクに
対して自らの力のみで対処せざるを得なく、その上公的保証も極めて少なく勤労所
得として給与所得控除も受けられず、退職金・年金も自らの責任で準備する以外全
く援助はないのです。
さらに労働基準法に守られ週40時間労働で土・日・祭日には家族サービスが出来
て夏にはクーラー、冬にはエアコンの労働環境にいるエリートたちが、労働基準法
の適用もなく(彼らはどんなに貧しくとも形式上事業主であるので)劣悪な労働環
境下例えば朝早くから夜遅くまでエアコンもない厳しい自然環境の中で労働してい
る人達と比較対象すれば公平でないことは一目瞭然であり、この現実事実を度外視
し机上の上で統計書をひっくり返しクロヨン議論をしているなんと妬み心の強いエ
リート達なのであろうかと悲しくなっているというのが実感であります。
であるからして農家や中小企業は後継者問題が大問題なのです。
さらに所得の把握方法が年間総額になっている点を忘れてはいけないのです。
クーラー・エアコン環境下での軽作業で年間1700時間の労働時間で給与所得6
00万円でかつ退職金、年金が保証され各種の福利厚生補助がある状況と、炎天下・
極寒下や劣悪環境下での年間2500時間の労働時間で年間事業所得600万円で
かつ退職金、年金が無く福利厚生補助が無い状況と同一税率が適用されるところに
現状所得税制の限界があるのです。
労働一時間あたりの所得を所得税の課税方法に変更し更に各種のベネフィット(利
益)の合計値で計算するのが所得税であると「定義すれば」現状では勤労者特にエ
リート高額所得者の税額は極端に安すぎるのです。
本当に安すぎるのです。
所得税の減税キャンペーンをとり続け、消費税導入の端緒を作り結果として現状の
国家財政を破綻の危機に陥れ、不況を招いてきたのは、マスコミの責任も大きいこ
とを反省材料として決して忘れてはいけません。
私は現状所得税の年間所得額課税方式にはこのように問題があるにしても、国民大
衆の常識に対応し「簡単明瞭」であることの利点は何にも増して重要と考えており
ますので、これの変更を主張するつもりは全くありませんが、現実の経済この様に
見ると大して重要でもないクロヨン論議に熱を上げるのではなく、机上の統計書で
は分からない現実を認識した上で判断していただきたいだけなのです。
したがって消費税を導入するよりは納税者番号制など所得のチェック機能を強化し
て所得税制が正常に機能するように努力し、所得税制にクロヨンの議論が出ないよ
うな大きな不正者を逃さない管理体制をしっかりと組み、そして消費税制を廃止す
る方向へ導くことが今求められているのです。
消費税制主体のヨーロッパのように自動車を買うと補助金を出す制度などを取らな
ければ消費拡大を出来ないような官庁介入経済になったら政府のコストは膨大にな
ってしまうのです。
それでは何故人は都市に集まるのでしょうか。  大都市には経済の過剰性という
エサがあるから、それに惹かれて人が集まるとさらに過剰性が生じ、そしてそれに
引かれてまた人が集まりより過剰性がふくらみそれに引かれてまた人が集まるとい
うサイクルで都市が膨らんでゆくのです。
大都市を潰したいという希望があればその大都市にかぎって所得税をその分減税す
る代わりに、消費税を高率課税すればいずれ都市の発展は無くなり(少数の大金持
は残るが、多くの大衆はこの都市以外で買い物するので過剰性は縮小し、ダイナミ
ズムの無いおもしろくない都市になるので)いずれ衰退していまいます。
これが大都市を潰すには時間がかかるが、最も簡単な方法だと思います。
消費税はこれほど怖い税金なのです。       



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