(経験論哲学の重要性と事実・経験に基づく実証の重要性について)

物事の真理を発見する場合、事実・経験に基づいた実証によって科学技術の世界で
は大発見・大進歩が果たされてきました。
科学技術の分野で大きな大原則を発見するのにもっとも威力を発揮したのは「実験」
と「帰納推論」であることは、細かい議論は別にして事実であります。

より個別的な事例の集まりから一般的な法則を導く方法を帰納推論といい、逆に既
知の一般法則から個別の事象を説明する方法を演繹推論と言いギリシャのアリスト
テレスが指摘しているところであります。
帰納推論には「帰納の飛躍」という困難な問題を含み、その部分にこそ「新発見の
鍵」が隠されているのです。
日本には川喜田二郎氏のKJ法という優れた帰納推論に基づく問題点の発見法が開
発されており、官公庁でも多くの部署で研修用に教育されているが、この手法の実
質的な精神や活用方法はほとんど利用されていないのが日本の現実であります。
アメリカ(イギリスを含む)は帰納推論国家であり、ヨーロッパ大陸は演繹推論国
家なのであります。
帰納推論は未知のものを発見したり、物事の歴史的連続性を確認するのに向いてお
り、演繹推論は論理の展開や現在における既知法則を教育するのに向いているので
す。
帰納推論は過去から未来までの広い領域を、事実や経験をもとに思考する方法であ
り、演繹推論は現時点の既知の法則に基づき個別事象を論理的に思考する方法と考
えれば分かりやすいと思います。
本書は消費税導入後の12年以上にわたって発生した事実・経験に基づき実証的に
日本経済を分析し、主としてアメリカ経済と比較して消費税問題を「帰納推論」に
基づき主として論じています。
そして「事実・経験に基づく実証と帰納推論がいかに大事か」を現代物理学の最前
線であるわずか80−90年前の一般相対性原理から量子論の発見と誕生までの秘
話から簡単にお話したいと思います。
100年前の古典物理学ではニュートン力学がわずかな差異はあるがほとんど全て
の事象を完璧に推論出来るところから、古典物理学者はこの世で分からぬものは何
もなく、物質の現時点の運動状態が把握できれば、過去の状態も未来の状態も完璧
に予測し決定できると豪語し哲学的な「決定論」へ進んだのであった。
したがって不確定なものは何もないという立場だったのである。
ところが実験によるわずかな誤差は、当初実験精度を上げればニュートン力学や既
知の諸理論で完璧に記述できると思われていたが、全く説明が不可能だったのであ
ります。
そこに表れたのがスイス特許局の審査技師でありながら、理論物理学を研究し一般
・特殊相対性理論を発表した天才と言われたアインシュタインと細かな実験とそれ
に基づく理論の発見につとめ量子論をまとめ上げたボーアを初めとするコペンハー
ゲン学派と言われた最先端の個性ある理論物理学者たちの素晴らしい業績があげら
れます。
確率論を含んだ量子論をアインシュタインは「神はサイコロを振りたまわず」と語
り生涯嫌ったが、結局量子論を否定できずアインシュタインの考えも量子論の考え
もいずれも正しかったのです。
彼らは「実験結果」からニュートン力学では説明出来ない些細な誤差を埋めるため、
「真実に徹底して近づく過程で」驚くべき発見を次々と成し遂げて行ったのであり
ます。
まさに天動説が誤りで地動説こそ正しいという「コペルニクス的転回」以上の発見
だったのです。
これらの業績は全て「個別の事実を素直に受け入れ」、「実験」に基づき実証的に
物事を考えるといったルールが如何に素晴らしい業績を上げるのか典型であります。
「彼らの業績を簡単に上げると」

1.物質はエネルギーに変換できる。 E=MC2(原子爆弾の開発原理)
2.光の速度はあらゆる系において不変である(素粒子の研究や距離の測定に重要
な原理)
3.時間は絶対的でなく系の速度によって早くもなるし遅くもなる。
またわずかな質量でも速度が光速に近づくと無限に近く重くなる(素粒子の研究や
将来の宇宙旅行に必要な原理)
4.空間も重力や速度によって縮んだり曲がったりする。(ブラックホールなどの
研究)
5.光は粒子であると同時に波である二重性を持つ(光電効果の研究、測定の意味
の研究)
6.物体の位置と運動量は同時には正確に測定出来ない。(ニュートン力学では当
然同時に両方精密に測定できると考えられていた)
7.原子核の周りを回っている電子等の位置は確率論でしか記述できない(絶対は
存在せず、確率のみが存在する。つまり不確定性原理の誕生 古典的な決定論は崩
壊した)
8.熱は最小単位があり不連続である(エントロピー概念の発見)
9.物質が波の性格も併せ持っているとする物質波の提唱

これらは現在でも素人の我々では理解が難しく首を傾げたくなるような内容である
が、あらゆる実験の結果、現代の理論物理学では正しいものとして受け入れられ実
証されているのであります。
つまり新しい理論の発見には素直な目を持った「実験」による「実証」とそれらを
まとめ上げる「帰納推論」は欠かせないものであり消費税導入という12年以上にわ
たる日本の消費税導入による経済運営実験結果について「適切な実験評価」を行な
い今こそ正しい結論を下し今後の指針にしなければならないのであります。 



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