(第四の論点 総需要抑制策の消費税の廃止と直接税への回帰)

1.この昭和の終わりに達成した世界一の経済大国日本の実現の快挙は実はアメリ
カが当時のマッカーサー総司令官を通じて日本へ導入してくれた日本人に適合した
アメリカ的日本改良版進化システムの諸制度と吉田首相と池田首相が導入した消費
税無しの最高所得税率75%の高累進所得税制と貿易自由化体制の成果だったので
す。
日本が成功したのは決して日本人が優秀な結果ではなく、若干の問題点があったに
しろ日本人自身が改良を続けたアメリカ的日本改良版進化システムの消費税無しの
最高所得税率75%の高累進所得税制が優れていただけの話しだったのです。
この税制の導入は戦後、吉田茂首相がアメリカ流の自由平等(対等)競争の絶対性の
有用性を認め、自分と同様の思想哲学を持った、戦中戦後国家税制企画担当最高ポ
ストの大蔵省主税局長を歴任した池田勇人を事務次官に重用したが、彼はアメリカ
の戦時体制でも統制色の強くない、強い増殖性を発揮する自由平等(対等)競争原則
の強力な経済成長効果と、その論理的帰結である90%超のアメリカ民主党の高累
進税制改革の敵将ルーズベルト税制が世界大恐慌を乗り切り、更に膨大な大戦の戦
費をまかなった上、失業率を最小化し戦後わずか2年で財政再建を果たした強力な
経済成長効果を、目の当たりに良く知っていた人物だったのです。 
吉田首相は第三次吉田内閣で自分と似た哲学を持つ池田勇人を初当選に関わらず、
大蔵大臣に大抜擢して最高所得税率を池田勇人の助言により、65%に引き上げ、
更にシャウプ勧告により選択肢の一つとして提案され、法律として成立していた現
在の消費税に相当するヨーロッパ型付加価値地方消費税を施行することなく廃止と
したのです。
首相となった池田勇人氏は大蔵官僚出身者であり大蔵省在任中、三年以上病床に伏
した後、大蔵省に復職した苦労人で戦中戦後を通じ国家税制企画の最高ポストであ
る大蔵省主税局長を歴任した税制改革と財政再建理論のエキスパートだったのです。
所得税率を日本最高へ累進強化することによって所得倍増計画と財政再建を達成で
きると確信し、物議をかもす言動と裏腹に国民へ分け隔てなく仕事と職を与える経
済成長のために「所得倍増計画を掲げて」「最高所得税率を日本最高の75%に引
き上げ国民の利他的意識と協同体意識を鼓舞し」「保守本流の税制改革」を大成功
させ以後30年間この税制を継続させ日本の高度経済成長と財政再建と国民福祉の
同時達成を実現したのです。
アメリカでも民主党のクリントン米大統領が全く不可能と考えられていた膨大な財
政赤字の解消と大幅な経済成長の達成を、高累進所得税制で世界大恐慌を乗り切っ
たルーズベルト税制を参考に「富裕層の累進増税を断行実施し」信じられない成果
を上げ同時達成を実現したことも記憶に新たです。       
所得税は累進税率を上げれば上げるほど高経済成長と失業率の大幅改善と財政再建
の同時達成が実現でき、逆に消費税は税率を上げれば上げるほど景気後退と失業率
の悪化と財政赤字の増大に悩まされるのです。

結局日本のエリートは第二次世界大戦前と全く同じく頂点に立った昭和63年に、
「当時からヨーロッパの財政は消費税制によって比較的安定していたので、たとえ
ヨーロッパが需要不足による失業問題に苦しんでいるとしても、日本人は特別であ
り需要不足にも失業率の上昇にも陥るはずもないという先入観に陥り、高齢化社会
になる将来の財政を安定させるにはみんな(アメリカ以外の他国)と渡ればこわく
無いという無責任な考えのもとにアメリカ的なものと袂を分かちヨーロッパ型の付
加価値税である消費税を詳しい検討もせず導入して税制という経済の根幹を消費規
制のヨーロッパ的なものへ大変更してしまい消費税という「総需要抑制政策」を取
り入れ人間の欲求の増大を消費税という手段によって規制し経済の過剰性の拡大を
妨害し現在の長期不況の原因を招いてしまったのです。」
その導入のコンセプトとしては「公平、中立、簡素」とし、税の国際化、直間比率
のバランス論など意味不明な言葉を羅列し、「本来真っ先に掲げるべき国民の幸福
の追求ためになるのかという日本国憲法の趣旨」の実証的検討がどこにも見あたら
ないまま、コンセプトのみを掲げあたかもそれらが真実であるかのように述べ消費
税の定着に突き進んだところに日本のエリートの哲学思想の不存在を強く印象づけ
るものであります。
必要で最小限の検討は「それが日本の国民の幸福にとって真に役に立つのか」とい
う一点だけなのにそれを徹底して行わない習性が日本人にはあるのです。
戦前の「欲しがりません勝つまでは」「五族協和」「大東亜共栄圏」という耳障り
の良く正しいと思われたコンセプトが日本人にどんな大厄災をもたらしたことを思
い出してもらいたいのです。
国家は「規制と促進」という二つの機能を使い分け国民に「あれをするな、これを
するな。 あれをしろ、これをしろ。」と強制して国家を統治しているのです。
さらに「そして税金は国家の統治機能の手段として採用されており、課税される側
からすれば罰金と同じ効果を持つ規制」なのであります。
そこで消費税は「消費に対する罰金つまり規制」であり、所得税、法人税は「所得
に対する罰金つまり規制」なのであります。
それでは同額を徴収するとすれば、どちらを規制することが経済に良い効果が表れ
るかまたはどちらが経済に悪い効果が表れるかだけの問題なのです。
人間個人に適用される 所得=消費+貯蓄(設備投資原資)という公式はミクロ経
済公式として明らかであります。
さて「所得」「消費」「貯蓄」のうち自己決定性があり且つ自己回帰的に増加が可
能なのは「消費」のみであり、「所得」は他から稼得する以上自己決定性もなく自
己回帰的でも無く「貯蓄」は自己決定性はあるが元金が決まっている以上自己回帰
的な増加は可能ではない。
そこで最も重要な原則は自己回帰的な増加性も無く、自己決定性も無い経済競争の
「結果で発生する所得に対する規制を行っても単に他に対する所得分配機能を発揮
するだけであり」市場経済システムである進化システムに最も悪影響が少なく、逆
に自己回帰的に増加が可能で自己決定性もある「経済の全ての出発点である消費に
規制を加える事は自己回帰的増加と自己決定性を否定規制抑制するのであるから経
済縮小の原因になる」ので、絶対に行ってはならないのです。
またミクロ経済公式で明らかなように所得に対する課税するということは、人間に
特に意識はさせないで「結果」として「消費と貯蓄へ平等に課税」を行っているわ
けであり、逆に消費税は人間に消費を規制していることを意識させている上に消費
のみを選択的に課税しこれを減少させ余剰資金を課税されない貯蓄へ強制的に誘導
する役目をしていることになります。

これでは貯蓄過多、消費過小の日本人の国民性と女性が家計の70%を支配してい
るという日本の特殊な慣行も重なり個人消費は一向に伸びず消費の自己回帰的な増
加拡大は実現されず、景気は後退したままになります。
また実務上で商品の販売促進策の立案や特売指導という企業経営の末端指導の経験
や多くの消費者懇談会の議論の経験から言うと、全ての商品やサービスに一律に消
費税を掛ければ「逃げ場がないので全体の消費は変わらない」という学者の論理に
は全く賛成できません。
消費者の意見は1000円で買物すると消費税を50円とられるのだから、「買物
をしないでガマンすることが多くなったし」「無駄と思われる買い物をしなくなっ
た」という「事実の声」に集約されるのです。
ここで忘れてはならないことは「買い物やサービスを購入消費する」という行為は
「結果としてその商品やサービスを生産に携わっている人間に同額の所得を支払っ
ているのだという利他的結果をもたらしている」という「重大な事実」を忘れては
いけないということなのです。
つまり消費を減らせば受け取る所得は減少し景気は後退するのです。
これを忘れてただ「無駄だとか浪費だとか」という言葉つまり戦前の「欲しがりま
せん勝つまでは」の誤りに陥ってはならないのです。
わたくしは倫理的や道徳的に退廃した消費まで行えと言っているわけではないので
す。
したがって現状のエリートが解説する消費税を5%から15%に増税しても消費は
変わらないという論理には「絶対に否」と経験的に確信しています。
経済は心理である以上学者の頭の中で考えた論理は絶対に通用しないのです。
消費が縮小しその分貯蓄を維持するために資金が振り向けられても設備投資先が増
加するはずも無くしかも自己回帰的な消費の増加も規制され増加しないので経済の
過剰性は停滞したり後退したりしながら経済規模は縮小するばかりなのです。
エリートが本当に消費税を増税しても経済が悪化しないと強弁するなら消費税をド
ンドン増税して財政再建を果たすべきなのです。
経済の過剰性(消費は第三者へ所得を稼得させるという利他的結果をもたらし環境
対策の消費や福祉問題への消費は究極の過剰性である)の自己回帰的な増加拡大エ
ンジン(経済の出発点)は需要側の「人間の欲求と消費」と供給側は「科学技術の
進歩と労働」のみであり、「所得の増大」は経済の過剰性が拡大した結果に過ぎず
結果としての「所得」への課税と規制は所得分配を促進し経済の過剰性の拡大その
ものに殆ど悪影響が無いどころか逆に促進効果さえあることが、論理的にも日本の
戦後43年間の高所得税率、高法人税率下での高度経済成長率の達成実績や、アメ
リカのクリントン政権の富裕層の所得税の増税を伴った本格的で記録的なアメリカ
の景気回復での見事なまでの財政赤字の解消実績から見ても明らかであります。
したがって逆に消費税は個人消費という経済の出発点である需要の自己回帰的増加
エンジンに直接課税し規制する総需要抑制政策の典型であり、自己回帰的に増加す
る消費を所得に転換して生きている人間にとって不況の到来は因果関係論から言っ
て当然の結果なのです。

その上消費の伸展は人類独特の利他的行動であり進化論における淘汰と選択つまり
文化の発展そのものであり、それを課税によって規制することは、経済的のみなら
ず文化的にも大きなマイナスなのであります。
課税は罰金とは違うという論理をエリートの皆様は展開するでしょうが取られる人
にとっては同じ事なのです。
つまり駐車違反は反則キップを切られ経済的損失が出るので、守るのであり、単に
道徳的に悪いと思うだけで守る人は少ないのです。
例えば鉄道のキセルでも磁気キップによるコンピューターによる管理体制が強化さ
れ不正が簡単に見つかるようになり、多額の罰金が課せられるようになった途端キ
セルが大幅に減少した事実こそ人間の本性が現れています。
奇麗ごとの学説や論理などで人間はなかなか動かないのです。
そこに課税の持つ恐ろしい副作用が表れるのです。
特に唯一の需要の無限増加エンジンである個人消費の70%の決定権を握るのは女
性であるというヨーロッパやアメリカやイスラム圏では考えられない日本人の特殊
な国民性は他国を模倣した税制は取れないのであり、各国の税制の良いところを学
びながら、日本女性の行動パターンを良く分析し、しかも日本女性に消費を抑制す
る気持ちを起こさせない日本流の税制をアレンジしなければならないのです。
一円二円の価格差で全ての買い物(消費)を自らの権限で行い、夫の所得に基づい
て行う貯蓄も妻である自らの権限で全て行う世界でも極めて珍しい独自の社会慣習
を持つ他の先進国の女性と全く異なる日本女性のたくましさと防衛本能をまず根本
的に認識しなければなりません。
そして経済規模を拡大するためには自己回帰的に増加が可能なのは消費だけであり、
それに罰金を掛けるなどと言うことは女性が家計と消費の決定権を握る独特の社会
慣習が存在する日本では副作用は大きすぎるのです。
人間は消費を所得に変換して生活し、消費の増加は所得の増加をもたらし、良い方
向への消費の増加は所得の増加と良い方向への文化の発展の両方へ役立つのだとい
う簡単な経済原理をまず理解しなければならないのです。
女性は男性と異なる脳の構造つまり右脳と左脳を結ぶ太い脳梁を持ち、女性は物事
の判断を右脳(直感脳)と左脳(論理脳)を平等に使用して物事を判断するのに対
して男性は殆ど左脳(論理脳)のみで判断を行う顕著な差があるところから、男性
がどのように論理を展開しても女性の鋭い直感力に基づく損得感情には全く歯が立
たないのです。
いくら財政政策や金融政策で景気刺激策をとっても日本女性の目はごまかせず税制
が強い総需要抑制効果を持つ税制であれば「この様な政策ミックスは誰が企画して
いるのか分かりませんが精神分裂的政策であり、火をつけては消して回るマッチポ
ンプ政策」であり、いくら努力しても後の子孫に厄災をもたらすだけであります。
景気回復は金融、財政、税制が三位一体となって針の穴を通すように政策を一点に
集中してはじめて効果の上がるものなのです。
結果として本書は「強い総需要抑制効果を持つ消費税の廃止」と「直接税への全面
回帰」こそが経済不況からの脱却と財政再建の根本政策になると提案いたします。
現在の5%の消費税を全廃し、これを所得税、法人税へ全額ふりかえた場合、この
ような政策を実行しない場合と比較して消費の増加は自己回帰的に年率1−2%程
度の増加差と推測され、累積的に10年で10−20%程度の消費および所得増が
達成され、さらに100年後には100%−200%増つまり2倍−3倍の消費及
び所得増が達成されると予測しております。

昭和63年当時の国民の圧倒的な反対の世論に抗して強引に消費税導入をした結果、
全ての分野に渡る株価の下落も金融機関の倒産や経営悪化に伴う公的資金の投入も、
地価の果てしのない下落もさらに国家財政の財政再建の困難化も全ては因果応報で
あり、自己回帰的なのであります。
そして自らの政策が変わらなければ、現状のどうにもならない経済も財政も何も変
わらないのです。
第二次世界大戦に敗戦し国民も企業も国も無一文の焼け野原に建たされた昭和20
年からわずか43年後の昭和63年には世界一の経済大国と称せられるようになり、
国民も企業も国も莫大な富と豊かな生活を手に入れたのは、国民と企業と国が自ら
その意識と哲学と思想を大転換し良い努力をした結果に過ぎず、新領土を戦争で獲
得したわけでもなく、資源を略奪したわけでもなく平和国家として狭い日本の固有
の領土で無意識にしろ進化システムを世界一忠実に守り育てただけの結果だったの
です。
「思いこみや観念・理念はともかくとして」エリート官僚や政治家が自ら作り上げ
た経済システムの根幹となる世界一の税制システムを事もあろうに自ら大改悪し、
日本の特殊事情下では自己回帰的に本人以外の第三者へ所得を稼得させるという利
他的結果をもたらす「消費に対する規制を強化し」逆に利己的結果だけをもたらす
「所得に対する規制を緩和する」という誤った判断を選択し進化に反する性質が顕
著に表れる消費税システムを導入してしまったのであります。

アメリカの進化システムを理解していたはずの自由民主党の事実誤認や毎年のよう
に行われた野党やマスコミの度を超した所得税などの直接税の減税要求などが重な
り消費税導入の責任を全てエリート官僚に押しつけるのは酷でありますが、まず担
当部署であります官僚エリートが変わらなければ自己回帰的に何も変わらないので
す。
また現実問題として廃止論議が長引くと消費税廃止を見越した「消費税廃止後に消
費しようとする買い控えが廃止の実現まで長期間続く恐れも出てくるのです。」
したがって消費税廃止論議の結論は短期決戦でなければなりません。
もちろん基本的には少々の副作用を乗り越えて直ちに抜本改正を目指すべきとは考
えますが、次善の策として所得税の増税と組み合わせた将来のサービス業の発展を
目指してアメリカ型の小売売上税(小売り業と飲食業のみへの単段階課税)へ税率
を変えず税制変更する案(消費税よりサービス消費に対する規制がない分失業率の
悪化が深刻にならない税制)とか、消費税率の大幅な減税処置とかを考える案も比
較検討することも一方法と考えています。
しかし私個人として姑息な政策はあまり賛成は出来ません。
「良いことを異常にやる国家は経済が進化発展し財政は見事に健全化する。」
「良いことを普通にやる国家の業績は可もなく不可もない。」
「悪いことを異常にやる国家は経済は進化発展せず財政は破綻し最悪の結果に陥
 る。」
この当たり前の自己回帰的原則が全てに適用されるのです。
民間は常にこの原則で活動しているのですから、国だといって特別ではないのです。
「そして詳しく次項で述べますが経済の基本である需要側については消費を規制し
ている消費税の可能な限りの廃止と国の税収の確保は消費の増加を規制抑制しない
直接税の増税で行うべきとする原則と供給(生産)側については結果として伸展す
る消費の方向性のコントロールには個別生産物規制基準の制定(全ての商品製品建
造物は最終的に寿命を終えてゴミに還元される運命にある以上、これらの物がゴミ
として排出後の処理やリサイクルを無害に且つ効率的に行い地球環境保護を促進す
るための)こそ成熟経済をシステム的に拡大する重要な要素になるのであり、そこ
には更に国政への進化システムの導入が重要な問題になるのであります。



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